• HOME
  • 金融・法律・会計事務所向けサービス
  • 不動産取引に関する意思決定支援
  • 賃料改定支援
  • 料金体系
  • お問合せ

不動産投資に騙された投資家を救え

カテゴリー:業務紹介  2018年9月14日 

1.事件の概要

お盆前の8月のある暑い日のことでした。

知り合いの保険営業の方から「私のお客様で不動産投資を失敗して困ってらっしゃる方が居るので、一度、相談に乗って貰えないでしょうか」と打診されたので、すぐに面談の日程を決めてお会いしました。「サブリース契約しているマンションの家賃が2ヶ月も滞納されてローン返済に困っている」ということですが、よくよく聞くと極めて典型的な悪徳不動産業者による詐欺まがいの取引の手口でした。


依頼人は年収1,000万円を超える比較的高収入のサラリーマンの方でした。定年を前に不動産投資に興味を持ち、不動産投資セミナーに参加しました。平成27年の春のことでした。そこで出会ったカリスマ講師に相談した所、すぐに不動産デベロッパを紹介され、投資用新築マンションを勧められるままに購入しました。城北の駅徒歩圏のワンルームで2500万円を金利3.5%25年返済のフルローンで某地銀が融資しました。

買う前に「月1万円程度の多少のマイナスになるよ」と言われていましたが、蓋を開けてみると、サブリース賃料からローン返済と管理・修繕費を支払うと4.5万円の毎月の持ち出しになりました。

投資用マンションを購入したのに、毎月のキャッシュフローがマイナスではおかしいのではないかと憤慨し、カリスマ講師に再度相談に行きました。すると不動産コンサルと名乗る方を紹介されて「キャッシュフローを改善するために1棟物の中古マンションを購入しましょう」と勧められ、すぐに「良い物件がありました」と大阪の中古マンションの広告を持った不動産業者Aを連れてやってきました。平成2712月、「これを買えばキャッシュフローが改善される」という口上に従って、同じく某地銀の担当とも会って健康状態や給与収入などの情報提供をしたところ、即日ローンが決定して、最初に相談してから1週間で大阪の中古マンションが契約・引き渡されました。契約の際に不動産業者Aは「今の持ち主からウチが買ってからお客様に引き渡しますから安心してくださいね」と言われたことに、意味もよく分からず重要事項説明書を承諾されたそうです。


瑕疵担保期間の2年が過ぎ、平成302月に販売元の業者Aがサブリース契約の解除を申し出てきました。困った依頼人は再度カリスマ講師に相談に行った所、さらに異なる不動産コンサルを紹介され、「ウチがサブリースしますよ」と言ってきたので、業者Aから5月に管理を引き継がせました。しかし、そのコンサルはサブリース賃料を払わず、電話にも出なくなりました。

2.事件の構図

相談を受け、登記情報を取得して何が起きたのかを調査しましたら、すぐにこの事件の構図が理解できました。前々主が平成17年に購入した時に7,200万円の根抵当を付けて融資を受けていました。そして前主が平成25年にこのマンションを購入した時には6,120万円の根抵当が付けられていました。マンションは平成元年築なので、築17年で7,200万円、築25年で6,120万円と、建物老朽化と共に担保価値が徐々に低下して行くのは当然のことで、通常の取引が行われてきたことが分かります。


しかし平成27年におかしな取引が行われました。9,170万円の融資が同某地銀によって実行されているのです。前主の購入金額よりも3,000万円以上も高い金額での取引が行われたのです。さらに調査を進めたところ、前主が売却した際の媒介業者から「前主が売ったのは不動産業者Bだった」と訊き出しました。しかも売買契約書に記載の売買金額は1200万円であり、10%が内金で別途支払われることになっている売買契約でした。



それで全ての取引内容が分かりました。その構図を図に示します。前主はたぶん「善意(=不知な人)」ですが、それ以外のプレイヤーは全てグルです。


不動産コンサルは仲間の業者Aに物件を探させ、AはBが知っている物件をコンサルに紹介し、コンサルとAは投資家に「Aの売物件」として取得を持ちかけます。代金全額を金融機関から出させるために、「融資金額が売買金額の90%になるように売買金額を上乗せ」して融資を決めさせます。融資が下りた時点で、Aは自己の取り分とコンサル支払い分、金融機関へのキックバック分()を差し引いてBに支払い、BはAから貰った代金から自己の取り分を差し引いた金額を前主に支払って売買契約を完了させます。前主に金が払われた時点で司法書士を呼んで「第三者のためにする契約が行われた」として法務局に登記申請し、所有権移転が完了します。謄本には前主と後主の名前しか残らず、業者A、Bは売買契約したにもかかわらず一円も自己資金を遣わずに譲渡利益を獲得することが出来たことになるわけです。

そしてその譲渡利益の源泉は、前主から買って依頼人に高値で売りつけた差額をグルである各プレイヤーが分配したものであり、その源泉を生み出したのが、某地銀が融資したお金だったというわけなのです。


3.再生への手順

相談を受けてすぐに知り合いの大阪の不動産業者に現地を見に行って貰ったところ、玄関前には生ごみが散乱していました



さらに共用部の電気と水道もコンサルが支払っていなかったので止められていたそうです。管理が崩壊していました。正式に事業再生の依頼を受け、弁護士を付けて、逃げた不動産コンサルをテキスト ボックス: 図4捕まえて管理契約を解除させ、鍵を取り戻して、賃料支払口座を変更して、新たな管理会社を探して運営の正常化を図りました。

 

私はこの事業再生業務を受任する際に、依頼者に言いました。

「あなたが被害者だと思っているなら、この仕事は受けません。投資の失敗であり、自己の判断の誤りだったから何とかしたい、と言うなら、喜んであなたの再生のお手伝いをさせて頂きたい」と。

 

弊社は経産省から認定を受けた、中小企業のための「経営革新等支援機関」ですので、事業再生を行うのが仕事です。特に不動産収益事業の事業再生を得意としておりますが、手順は一般的な事業再生と同じなのです。すなわち以下の手順が基本となります。

収益事業のコスト構造の見直し、収益増大の方策の検討と実行
(業務リストラ)

債務の返済条件の見直し交渉(財務リストラ)

実現可能な抜本的経営改善計画(実抜計画)の作成と、
利害関係者の合意取り付け、計画の実行

この場合、業務リストラでは管理適正化と募集再開(既に半数近い部屋が空室になっていた)を行い、さらに毎月の出血を抑えるために元本弁済猶予を主とする支払条件の一時的な変更を交渉(弁護士担当)し、その後に、長期修繕費用や賃料の将来見通しを調査して、精緻な事業収支を求めます。その上で「幾らなら安定して払って行けるか」を明示した実抜計画を策定し、金融機関に合意を求めていくことになります。自己破産されるより再生計画に基づく弁済計画を認めた方が回収可能な債権額が多いことを示すことで、本実抜計画の承認を獲得して行くことになります。

 

先日、スルガ銀行に関する第三者委員会の調査報告書が公表されました。

本件は極めて典型的な事例だと思います。第三者委員会報告書の13ページに記載された融資分類によれば、話題になったシェアハウスは1割にも満たない融資額であり、大半が中古マンション等向けの融資です。今回の依頼主と同じように自己破産に怯えてらっしゃる方が多くいらっしゃると思います。またスルガだけでなく他の銀行でも類似した事例があるようです。

同じスキームで救済できると思います。お困りの方がいらっしゃったら是非、お声がけください。

以上

メルマガ登録

セミナー情報

用語集

ブログ

くまさんの食日記

アクセスのご案内

〒210-0014
神奈川県川崎市川崎区貝塚1-4-13
コスモ川崎502号
ITOソリューションズ株式会社