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投資用不動産の経営改善(救済支援)について

第2回.築20年超マンションに気をつけろ

カテゴリー:業務紹介  2018年9月23日 

1.はじめに

投資用不動産、特に中古マンション投資の場合の留意点は、築年経過(老朽化)に伴う競争力低下が賃料低下として現れることを第1回に説明しました。実は老朽化に伴う変化は賃料低下だけではないのです。プロの投資家は知っているか、または直感的に判っていることなのですが、その点を個人投資家の方々はあまり御存じないと思います。

 具体例を示します。下図に中古マンション一棟物の成約実績を示しますが、この事例は横浜市郊外の住宅地に存する物件の売買事例です。購入者の属性を分けて示していますので、図で見て分かるように、個人は表面利回りで8%程度でも買いますが、法人は表面利回り10%以上でないと築20年超の中古一棟は買わないのです。

その理由を以下に説明します。


2.老朽化に伴う空室期間の長期化

 横浜市郊外の住宅地にある一棟マンションの不動産鑑定評価のための調査を行った際に得たデータですが、老朽化に伴って空室期間が徐々に長期化することが分かりました。その状況を下図に示します。図には移動平均曲線を合わせて示しています。

 築20年程度までは退去後2ヶ月程度で次の入居者が決まるのですが、築20年を超える辺りからワンルームタイプでは徐々に退去から次の入居者が決まるまでの期間の長期化が顕在化し始め、平均で4カ月程度になっています。ファミリータイプでも平均で2カ月を超え始めます。その理由についてオーナーに聴取したところ、「築20年を超えた物件だと、入居希望者が検索もしてくれなくなる」のだそうです。SUUMO等で賃貸マンションを探す方は「築年数」の項目の上限を設定するようで、それが「築20年以下」がとても多いそうなのです。そのために検索物件に築20年超の物件が現れないという事が現実に起きているそうなのです。



3.居住期間の短期間化

 空室率の長期化と併せて、マンション経営を悪化させる要因は「居住期間の短期化」です。賃借人は住み心地が良いと思えば2年毎の更新時にも更新料を払って更新して入居を継続します。特に建物が新しい間はそう思う人が過半で、平均入居期間も5年程度を維持してくれています。オーナーとしては入居者が長く住んでくれるほど安定した収入を得られますので、築年の新しい間は安定した経営がなし得ます。

 しかしやはり築20年を超える辺りから、徐々に入居者の居住期間の短期化が顕著になり始めます。その状況を下図に示します。図は入居から退去までの入居期間を、入居時(契約時)を横軸にプロットしたものです。同様に移動平均曲線を併記しました。バラつきは大きいものの、ワンルームタイプもファミリータイプも、築20年前後から平均2年で退去していってしまう傾向が顕著になっていることが分かります。

 なお、このマンションのオーナーはこの入居期間の短期間化に危機感を感じ、ある工夫を始めたそうです。その施策が功を奏して、特にワンルームで「短期退去者が殆ど出ない」状況に改善していました。オーナーが何も工夫をしなければ、築20年を超える賃貸マンションでは、2年更新の度に入居者が退去していってしまう可能性が高まるのです。



4.リフォーム費用の賃貸人負担の増大

 入居者が退去した後に、次の入居者に気持ち良く入って貰うためには、室内が綺麗になっていることが重要です。新築、築浅の間は特にお金を掛けずとも、水回りのクリーニング程度でも良いのですが、建物が老朽化してくると次第に交換すべき内装部品も増えてくるものです。外観が旧くても中が綺麗なら、入居希望者は借りてくれるものです。そのため、クロスやクッションフロアの全面交換や、水回り設備等の順繰りの更新工事などを入れて行かないと行けなくなります。老朽化してくるとファミリータイプでは毎回10万円を超える多額のリフォーム工事が必要になってくるのです。

しかも東京都条例が先行して現在は国交省令で厳しく指導され始めた「賃貸人の修繕責任」により、賃借人の原状回復工事費用の負担が制限されるようになり、近年では毎回の退去の度に賃貸人が多額の負担をしなくてはならない状況になりつつあります。

 このため築20年を超えるマンションでは、毎回の退去の度の貸主負担の現状回復費用は多額化しています。その状況を下図に示します。



 築20年前後で設備の更新が行われるために原状回復費用の貸主負担額は増大します。さらにクロスやクッションフロアの張り替えに要する貸主負担も増大しており、退去の都度の負担額は大きな金額になっているのです。

 

5.仲介料の増大

 空室期間の増大に現れているように、老朽化した賃貸マンションでは容易に次の入居者が決まりません。「建物が旧い」というだけで競争力が落ちてしまっているのです。それでも何とか入居希望者を連れて来て貰いたいオーナーは、不動産業者の方に「広告料」を支払って、優先的に紹介してくれるようにお願いすると言う慣行も常態化しています。広告料はオーナー負担です。老朽化すると仲介のためにオーナーが支払う費用も増大してくるのです。

 

その他にフリーレントや賃料値下げなどを提案される場合もあります。フリーレントも空室も賃料未収受期間の増加であり、賃料値下げと同様に売り上げ減少となります。一方で原状回復工事の貸主負担額の増大、入居期間の短縮化に伴う仲介料負担の増大および広告料等の負担増は費用増大となります。

老朽化による「収入減&支出増」によって、不動産事業の純収益が減少して行くのです。それが築20年マンションの実態なのです。


プロはそれを知っているから、最低でも「グロテン」、すなわち表面利回りで10%、できれば12%は無ければ収支が合わないと言うのを体験的に知っているので、20年超の中古マンションで10%以下の物件など見向きもしないのです。

投資判断は純収益(Net Operating Income)で判断するものです。収入の下振れリスク、支出の上振れリスクを織り込んだ純収益を計画することで、安定な不動産収入が得られるようになるわけなのです。

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