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駅から近ければ良いってもんじゃないのでは?
--- マンション選びの注意点 ---カテゴリー:市場分析 2013年3月10日 記事番号:918
写真はババ・オ・ラム発祥のお店、ストレー(パリ モントルグイユ通り51番地)のババ達です。日本では美食家サバラン氏の名前を冠した「サバラン」という名前の方が有名になっていますが、欧州では"Baba Au Rhum"です。
これはラムシロップに浸したケーキなので、酒飲みにも受けが良い人気のお菓子。
でもでも気を付けないと酔っぱらうし、何しろカロリー甚大なので太ります。
知って覚悟して選べばよいのですが、
見た目や条件だけで選ぶと痛い目に合う、
「マンション選び」も一緒ですよ。
どの住宅誌、不動産屋さんも口を揃えて言うのが「マンションを選ぶなら駅前物件ですよ。駅から徒歩10分圏内でないとダメですよ」です。
これは基本的には間違いないです。
特に賃貸マンションでは駅から10分を超えると、途端に人気が落ちます。
では駅から近ければ良いのでしょうか。
特に収益物件や自己居住物件として「分譲マンションを買おうと思っている方」に注意をして頂いた方が良い点がございます。
(1)日当たりが悪いと途端に居住用マンションは人気が落ちる
幾ら駅から近いと言っても「日が全然当たらない部屋」というのは嫌ですよね。誰だって嫌なものなのです。そして絶対に気を付けないといけないのは「今は日が当たるけど、将来的にもずっと当たってくれるのか」という点です。
どうやってそれを判断したらいいのでしょう。
隣が今は戸建てなんで今は日が当たるけど、数年後に戸建ての土地が売られて高層マンションが建つことだってありますよね。
どうしたら良いと思いますか?
(2)駅からの距離は実は道路距離ではない。
不動産屋さんの広告で「駅から8分」とか書いてますよね。それって「距離を分速80mで割った時間」を表示することになってます。では距離は何でしょう。
驚くなかれ、少なくない数の広告に掲載された距離は「直線距離」なんですよ。
普通の人はヘリコプターには乗らないので、道路を歩きます。だから駅からの距離を正確に把握するためには「道路距離」で比較しなければいけません。だって歩くのは家の屋根の上をではなく、道路ですからね。
どうやってそれを見破ったらいいと思いますか?
【解答】
(1)どうやって陽当り良い物件を選んだらよいか。
まずね、マンション敷地の道路付きを見ましょう。
マンションの南側に幅員15m以上の道路があるなら、陽当りはずっと良いはずでしょうね。ただし道路挟んだ反対側に巨大な高層マンションが建ってしまったら、低層階では日が当たらなくなる可能性はあります。
そのような高層マンションが建てられてしまうのが「商業地域」と呼ばれる地域なんです。日本全国どこでも「日照権」なるものが主張できると誤解されている方が居ますが、実は商業地域では日照権など主張できないのです。日影規制(建築基準法第56条の2)は適用除外なのです。だから商業地域では、北側の住人の事なんか一顧だにしなくてよいのです。
普通、駅前の大通り沿いの地域は商業地域指定されてます。だから駅前の便利な場所でマンション買ったら、普通に陽当りは期待できないのです。特に大通りから一本中に入った幅員8m程度の道路沿いで北側道路のマンションは危ないです。例え今は南側が中低層建物が建っていたとしても、いつ何時、南側に高層マンションが建つやも知れません。そうしたら日照は皆無です。
賃貸ワンルームならそれでも「駅前の便利な部屋が良い」という需要がありますから良いですが、ファミリータイプの部屋で日照ゼロではよほど賃料を下げないと入らないです。どのくらい下がるかと言えば、先に御紹介した川崎の事例では㎡単価で1,000円の差、30㎡の!LDKなら1部屋当たり年間36万円の差が出てしまいます。
商業地以外ならどうかと言えば、たとえば準工業地域や第一種住居地域という比較的容積率の緩和された用途地域があります。大抵が東京では第3種高度地区に指定されていて、北側隣地境界で10m高さ以上の部分には日を当てないといけないというものですが、3階以下の住戸はやはり日が当たりません。
ですから3階以下の低層階は今は日が当たっていても、将来的に隣地に中高層のマンションが建ったら日が当たらなくなっても文句が言えない、賃料が下がってしまう、ということを十分に理解して購入されることが必要です。
実際、築20年の駅前マンションで、全く日が当たらない低層階の部屋というのを幾つも見てきています。そうしたマンションが建った当時の南側は低層戸建住宅だったんですよ。日が全く当たらない、暗くじめじめして苔むしたベランダは哀しいです。
(2)実際の距離はどうやって測るのか。
先日、「駅から12分」とい広告記載を見て、絶対におかしいと思って調べたら、やはり直線距離でした。道路距離では途中に公団住宅などもあって迂回が必要で、徒歩20分もある場所でした。
ではどうすれば本当の駅距離を把握すればよいでしょうか。
それは物件の住所を正確に不動産屋さんから聞き出して、マピオンとかグーグルマップとかで徒歩距離を出せばよいのです。この時、絶対に気を付けないといけないのが、不動産屋さんの「駅からの距離」の駅は「駅の出口」なんです。
特に地下鉄は注意してくださいね。地下鉄は地表面の出入り口から電車乗るまでに5分以上歩くことって結構ありますでしょう。我々が知りたいのは「ドアtoドア」の距離ですよね。その点も十分に考えて、地図上の駅の位置(たぶん改札口が良いです)を分かったうえで計測してくださいね。
たぶん不動産屋さんの広告の距離と全然違う結果が出てくると思います。
ちなみに不動産鑑定評価では、現に陽当りの無いマンションは賃料収益が下がっているので、収益価格で評価して減価します。また駅距離は必ずマピオンで自分で測り直して計算します。不動産屋さんの広告距離は全く見ませんよ。
(注)
ストレーのババ達はここに見せているように三種類です。
真ん中がオーソドックスなババ・オ・ラムで、コルク状のブリオッシュをラムシロップに浸したものです。
左はそのババ・オ・ラムに切れ目を入れて、生クリームをたっぷりつけて、果物をトッピング。
右はレーズンをクリームにいれたアリババです。私がストレーを訪れた日は多くのパティスリーでババが見つかり、一日に5個も食べる羽目になった日でした。
http://blog.livedoor.jp/kumasanr/archives/3953131.html
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家賃で困っている人は誰?
カテゴリー:業務紹介 2013年3月3日 記事番号:917
※写真はシンガポールのとあるビルの影で偶然見かけて撮影したものです。
カラスなんですよ。 カラスが縄張り争いしてるんです。凄い勢いで羽ばたきながら、侵入者の追い出しをするんですね~。まさに鳥獣戯画のような一瞬を撮影することが出来ました。
家賃交渉は縄張り争いではありませんが、意外に難しい問題のようです。
裁判所の判例を見ていると「賃借人からの家賃値下げ交渉」に係る事件が多く見られます。
このため「家賃に係る問題の多くは賃借人からの家賃値下げ交渉が多いのかな」と思ってました。しかし実態は少々違うようですね。
住居用途や事務所用途のテナント入居者の方は、比較的身軽に引っ越しが出来ますので、「安くて良い所」があればすぐに移ってしまいます。このため、市場賃料(新規の賃貸借契約において成立する賃料)に近い額で契約更新される場合が多いようです。
家賃交渉も何もない、入居者は周辺の募集賃料を見て「こっちの方が新しくて広くて安いじゃない」と思ったらさっさと移ってしまいますので、家主は大変です。同品質で市場賃料より高い家賃の部屋は借手がつかずに空室になりますので、仕方なく家賃値下げして募集を掛けなくてはならなくなりますからね。
自然と家賃は市場相場に収斂(しゅうれん)していくことになるのです。
これは入居者が「部屋を変えるためにお金がさほどかからないから」です。
すなわち 賃料差額>転居費用 なら転居されてしまうのです。
賃料差額=(市場賃料-契約賃料) × 契約期間
転居費用=引越代金+転居案内費用+造作設置費用+原状回復費用
引越代金 :引越代金+礼金等+仲介費用
転居案内費用:連絡葉書+従来顧客への案内や新店舗周辺への宣伝広告
造作設置費用:新店舗の造作設置費用
原状回復費用:旧店舗造作等の撤去費用
しかし、特に飲食店舗や診療所等の用途でテナント入居されている事業者の方は、このうちの造作、設備の費用を掛けないと営業が出来ないので、お店を変える度に造作のやり直し費用が発生してしまいます。
また「店にお客がつく」のであり、その地域にそのお店が存在するから、そのお店にお客様が通ってくるものであり、店の都合で場所を変えれば、お客様への連絡や新店舗周辺での顧客新規獲得に費用が掛かってしまうことになります。
こうしたことから、なかなか「賃料差額>転居費用」にならないため、居住用途や事務所用途に比べると転居が難しいのが実情だと考えられます。
昨今の不動産市場の低迷により、賃料は下落を続けています。このため、殆どの不動産で市場賃料に比べて、自分が契約している不動産の賃料が高い、という傾向が生じています。
一方、長期のデフレ基調によって、店舗経営社の事業収入が減少し、総収入に占める賃料の比率が相対的に高まっている傾向がみられます。
こうしたことから、店舗経営者の方にとって賃料値下げ要求は至極当たり前のことのように思われます。
借地借家法第三十二条では「建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。」とされてます。
すなわち以下の三要件のいずれかの理由によって 契約賃料が不相応になった場合には、借地借家法に定められた借賃増減請求権によって、賃貸人または賃借人のいずれか一方から賃料増減額の請求ができるのです。
①公租公課等の負担の変動
②経済事情の変動
③市場賃料の変動
本来は値下げ時は賃借人(店子)が、値上げ時には賃貸人(大家)がこれらの三要件について数字を調査して、相手方に根拠として示して値下げまたは値上げを認めて貰うのが筋となります。この交渉がまとまらなければ「民事調停法第24条の2(後述)」の定めによって調停を経て裁判を行うことになります。
しかし実際にはそうした手順に及ぶことなく、大部分が店子である店舗経営者のネゴによって値下げが行われているようです。しかもその大部分はいわゆる「泣き」と呼ばれる手法です。
具体的な「泣き」の交渉は「客足が落ちているので売り上げが減っている」とか、「不況で財布のひもが固くなっている」とか、上記の②の理由を説明して賃貸人(大家さん)に値下げをお願いするものです。もっと直接的に「とにかく売り上げがこれしかないから家賃が払えない」というような、文字通り「泣きを入れる」場合もあるようです。
いずれにしろそうしたネゴによって賃料値下げを認めて貰えるケースが少なくないようです。
でもそうなって困るのは誰でしょう。
実際のところ不動産市場の低迷で最も困っているのは賃貸人(大家さん)であるというケースが少なくないように見受けられます。と言うのも、そもそも市場賃料が下がったからと言って、市場賃料水準まで賃料を下げるのは賃貸人の利益を一方的に損なうものであり、利益衡量の精神に反して本来は不当なのです。
しかもこうしたネゴが行われた場合、賃借人である店舗経営者の方は、市場賃料よりも低い額でのお願いをする傾向にあるようです。大家さんも大部分は人が良い方が多いので「経営が困っているなら仕方ない」と値下げ交渉の値下げ幅について賃借人の方の希望を聞いてしまって、市場賃料水準や市場賃料水準以下の水準まで値下げを容認してしまうケースがあるようです。
もちろん「家賃が払えねえならとっとと出て行きな」と頑なに値下げのお願いを拒絶する大家さんも実際にはいらっしゃいます。そうした大家さんの言い分は「一度約束した(契約)賃料なんだからウダウダ言うんじゃない」というようなものだと思われます。
そうした大家さんの店舗不動産を借りてしまった経営者の方は、その不動産の存する地域の就労人口減や不況による交際費減等の外部要因によって売り上げが落ちて経営が困難になっているにもかかわらず、「そんなことは知ったこっちゃない」という大家さんの頑なな態度になす術無く、最終的にタダ同然で造作を泣く泣く手放して出て行くということになってしまう場合もあります。
賃料の増減額交渉は賃貸人・賃借人の相互に言い分があるはずです。
そして一番大事なことは「適正な水準はどこにあるのか」という点を見極める必要があるという事だと思います。
賃料改定交渉で揉めれば、最終的には調停、裁判となるものですが、その場合に裁判所が裁定するために参照するのが不動産鑑定士による賃料の鑑定評価額です。
ですから最初から不動産鑑定評価による「適正な賃料額」を相互に知ることが出来れば、不当な賃料値下げを回避することもできますし、「頑なに賃料値下げを拒絶する大家さん」に対して説得する有力な材料になるというものです。
賃料で悩んでらっしゃる方がまず相談すべきは不動産鑑定士なのです。
まず適正賃料を知ることが重要なのです。
それは賃料値下げを求めたい方も、値下げを求められてしまった方にも重要なことなのです。利益衡量の精神、すなわち契約関係にある当事者同士は、一方がすべての利益や不利益を負うというのは不当であり、相互に応分の負担をしあうのが民法が定める本来の精神なのです。
そのためには不動産鑑定という手段を活用するのが最も適切です。
まずはお気軽にご相談ください。
第二十四条の二 借地借家法 (平成三年法律第九十号)第十一条 の地代若しくは土地の借賃の額の増減の請求又は同法第三十二条 の建物の借賃の額の増減の請求に関する事件について訴えを提起しようとする者は、まず調停の申立てをしなければならない。